愛媛の蒲鉾・手作り蒲鉾の歴史

 愛媛のかまぼこの歴史をひも解くと、宇和島大観に元和元年(1615年)宇和島藩主伊達秀宗公が仙台から職人を連れてきてかまぼこを作らせたとあります。従って、この年を愛媛で練り製品が生産されるようになった起源とされており、約三百八十年余りの歴史があります。

 宇和島に練り製品が根付き、発展した原因は、昔から宇和海ではイワシ漁業等が盛んで、練り製品に好適なエソ等も豊富に水揚げされたことがあげられます。そのため、原料魚に恵まれた宇和島では江戸時代すでに商品化され、市場に出回るようになっていました。この時代、宇和島では魚屋と練り製品製造業を兼業していたが、明治になると練り製品製造業を専業とするものも増えてきました。

 当時のかまぼこの製法は、近海で獲れたエソを包丁でさばき、三枚おろしの肉から筋を取り、すり鉢や石臼を用い、うさぎの餅つきのように搗いて肉糊を作り、板に付け炭火等で加熱しており、ほとんど道具を使った手作業で少量つくられていました。明治23年(1890年)に宇和島市出身の鈴木峰治氏によって八幡浜に製法が伝えられました。宇和島と八幡浜は50kmほどしか離れていないにもかかわらず、技法の伝統に275年もかかったことになり、当時いかに情報が遅かったかが伺い知ることができます。

 その後、今治、松山に拡がったとされており、現在も宇和島、八幡浜を含め四地域が愛媛の練り製品の産地を形成し、重要な地場産業として発展しています。昭和になると宇和海の漁獲が少なくなり、トロール漁業の漁獲物に依存せざるを得ない時代となり、八幡浜にはトロール基地、魚市場が整備されており、原料確保等で有利となりました。鈴木峰治氏は大正4年に全国に先駆け八幡浜蒲鉾協同組合を創設し、結束を固め、博覧会等に出品するなど知名度を高め、業界発展につくしました。鈴木峰治氏を顕彰し八幡浜市の愛宕山に胸像が建立されています。

 この頃から、かまぼこは付け包丁を使い、ちくわは握ったすり身を竹に巻きつけ作られました。じゃこ天ぷら(皮てんぷらとかじゃこ天と呼んでいる)と称する揚げかまぼこは、近海で獲れるホタルジャコ(現地ではハランボ)、ヒメジ、ヒイラギ等の小魚を用い、頭、内臓を除去し、得られたドレスをよく水洗いをした後ミンチにかけ挽肉とし、食塩、調味料、少量の澱粉等を加え、らい潰して肉糊を作り、直ちに木枠に手で押し、扁平状に成形して竹へらで取り、大豆油、菜種油のような植物油(180℃-2分)で油ちょう、脱油して作られました。

 この製品はかまぼこ類と異なり水晒しを行わず、骨、皮ごと原料とするため、省力的、省資源的な製法と言え、カルシウム等の栄養分も豊富に含まれており健康食品でもあります。また、見かけはそれほどよくありませんが、ソフトな弾力と独特な風味があり、揚げたてや再加熱して醤油を1、2滴たらして食べるとおいしく召し上がれる逸品です。
 
 また八幡浜の特産品に皮竹輪と呼ばれるものがあります。かまぼこ原料に使われるエソの皮を原料にしたものであり、副産物をうまく利用した製品です。ただ、製品にするまで手間がかかり、大量生産ができないことでなかなか手に入りません。エソの皮を肉からはぎ取り、鱗や小骨を手作業で除去し、よく水洗いをします。この皮と少量のつなぎのエソの肉糊を臼に入れ混ぜ合わせ、竹あるいはステンレス棒に手際よく巻き付け、そして炭火あるいはガスで焼いて仕上げています。皮のコラーゲンが溶け出し、つなぎのエソ肉と調和のとれた食感と味は絶品で、味わった人でないと説明できないほどの珍味(1本1000円位)です。1本の皮竹輪にエソの皮が10枚前後は必要であり、原料皮量や手作業でないと出来ないので、生産が間に合わないため予約注文にしています。酒の肴にはぴったりで、薄く(約2mm~5mm)切りスリ大根にレモン酢と醤油をちょっと落として食べます。この味は通の人の間では絶品といわれています。

 削りかまぼことは、かまぼこを乾燥してから適宜機械で削ったものです。原料には冷凍すり身の他、エソ等の生魚も使用されます。弾力はそれほど必要ではありませんが、かまぼこと同様に調製した肉糊を10×15×1㌢の木枠で成形し、蒸してかまぼこにし、この時、厚さを二分の一とし紐に二十枚吊るして乾燥機と天日でからからになるまで乾燥します。次いで削り節の削り機を改良したもので適当な厚みに削ります。保存性があるのでプラスチックの袋に入れて販売しています。酒、ビールの肴に適しており、また、吸い物の具等にも使用されています。特に地元では、おにぎりにまぶしたりして昔から親しまれています。

 魚肉煉製品は、愛媛の地域にねざした特産品であります。「伝統的地場産業」とは、「伝統的工芸品産業の振興に関する法律」(昭和49年)に基づく伝統的工芸品を事業とする産業を対象とし、昭和49年に、歴史と風土から育まれた生活用品が地域経済の発展に寄与することを目的に制定され、一定の要件(100 年以上の伝統があること、日常生活品であること、伝統的技法によることなど)に合致する工芸品について、大臣(経済産業大臣)が指定し、振興を図ることとしています。当社では、この伝統工芸士に、平成13年に菊池義晴氏が選ばれています。
このように当社では、技を各世代に継承していく努力をしています。

 

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